ハチャトゥリアン

ハチャトゥリアン

作:モウヤメルンダッ!!

ハチャトゥリアンのワルツと共にお楽しみください。

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『アビドス廃校戦争終結から7日。つい先日行われた聖園ミカ元パテル派首長の葬儀以降、パテル派はゲヘナとの関係を巡り左右にて分裂状態にあり、また新首長も選出されないことから依然として混乱状態が・・・・』

『本日、救護騎士団に対する第一回査問会が執り行われました。アビドス戦争における救護騎士団よの救護義務違反が争点となっており・・・・』

『トリニティ臨時評議会では現在も、戦時中ゲヘナに亡命した百合園セイア及びサンクトゥス派のティーパーティー復帰に関する議論が紛糾しており・・・・』

『今朝、ツルギ委員長は正義実現委員会の機能不全を宣言しました。アビドス廃校戦争において約9割の戦力を失ったと推定されており・・・・』

『現時点での行方不明者は1953人とされて・・・・』

ピッ

私はこれらの情報を垂れ流すテレビを消す。

ナギサ「・・・・」

なぜこうなってしまったのだろうか。

私は幼馴染たちとの写真を横目で見ながらため息をつく。

アビドス廃校戦争において、トリニティは数奇な運命を辿った。

週に一度訓練ごっこをやっているだけのティーパーティー親衛隊だけではまともに戦えず、ミレニアム強襲作戦の結果、そこにいたミカさんが人質に取られるという最悪の目を引いたのだ。

私は浦和ハナコから突きつけられた「回答期限」の2日前にセイアさんとサンクトゥス派の生徒を列車でゲヘナに亡命させ、回答期限の日に全ての責任を負う形でゲヘナに宣戦布告をした。

しかしミカさんは帰ってこなかった。

ハナコは『再教育』をする必要があると言って彼女をアビドスに置いたのだ。

そして3月5日。ゲヘナはアビドス各地にミサイルを発射。

戦争はゲヘナの勝利に終わり、ミカさんはついに再びトリニティの地を踏むことなく散った。

そして今はこの有様である。

良かったことといえば、戦後の私たちに対する処置が寛大だったことだ。

裏切り者の私たちは本来、土地を半分にされ、賠償金をむしり取られてもおかしくない。

しかしマコト議長は私達に対して無賠償を約束した。

『聖園ミカの死は私達にも責任がある。それに今回の戦争を主導したわけでもあるまい。キキッ、案ずるな。金は旧アビドスの預金からむしり取った!!貴様らからは取らん!』

そんなことを言っていた彼女は、空崎ヒナとの会話で上がった彼女の人物像より随分丸かった。

「ナギサ様。評議会より声明文が」

私は片手でそれを受け取って下がらせると、1人になってそれを開く。

『評議会は一つの結論に達しました。天使と悪魔という種族の根本的差を理解せず、悪魔を頼った背徳主義者が再び神聖なるトリニティを治める正当性はないと考え、百合園セイア及びサンクトゥス派のティーパーティー復帰を拒絶します』

思わず紙を握り潰しそうになる。

評議会は今のトリニティの状況を理解しているのだろうか。

結局この戦争が終わった後も、彼女達はこの世界の潮流の変化に気がついていないのだろう。

ナギサ「・・・・どうしたものやら」

夕方、私はヒフミさんと話していた。

ナギサ「ヒフミさん。・・・トリニティの為政者である私がいうのもアレですが、早いうちにトリニティを離れた方がいいと思います。・・・・・正義実現委員会も機能不全になり、また各地でアビドスの残党が砂糖中毒者を増やしているとの情報もあります。ここにいてはあなたの青春は保証できない。」

ヒフミさんは辛そうな目で俯く。

ヒフミ「・・・・ありがとうございます。でも・・・・私は・・・・・・・・トリニティを捨てることなんてできません・・・・」

私はティーカップを置き、彼女の話に耳を傾ける。

ヒフミ「・・・私がトリニティを見捨てたら、きっとハナコちゃんに壊されちゃう。私はまだトリニティにいたい。青春をここで過ごしていきたい。・・・・だから、他の自治区には行けません・・」

ハナコはもう・・・と言いかけた口を閉じる。

現状、浦和ハナコの遺体は見つかっていない。

それにおそらく彼女は、ハナコともう一回話し合いたいと心の底から思っているはずだ。

そんな想いを邪魔するわけにはいかない。

ナギサ「・・・・そうですね。ヒフミさん。・・・・・・ではこれだけ。・・・・周りにはとにかく気をつけてください。まだ砂糖を隠し持つ人はたくさんいますので」

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『緊急評議会の結果、我々は一つの結論に達しました。天使と悪魔という種族の根本的差を理解せず、悪魔を頼った背徳主義者が再び神聖なるトリニティを治める正当性はないと考え、百合園セイア及びサンクトゥス派のティーパーティー復帰を拒絶します』

『フィリウス派はミカ様を見殺しにした挙句、今後の治安維持をあの悪魔共に任せようとしている!もう我慢ならない!!!ナギサの暴政を叩き潰すぞ!!!』

『シスターフッドから全生徒に告ぐ。現状、ティーパーティーは政治的内紛状態にあり、トリニティは極めて深刻な混乱状態に陥っている。そのため、唯一の公平な宗教組織である我々はトリニティの秩序を回復するべく、これより特別軍事作戦を開始する』

『時は満ちました。これよりトリニティから全ての膿を駆逐します。親衛隊各員は速やかに作戦第53号に基づき、指定の持ち場に移動してください♡』

『スクエアにて爆発です!情報が錯綜していますが部室会館にてヘイロー破壊爆弾による爆発があった模様で死傷者は複数人発生しており・・・』

『ティーパーティーから戒厳令が発令されました。フィリウス派報道官は戒厳令は一時的なものとしている一方、パテル派及びティーパーティー以外の組織はこれを誤報と伝えており・・・』

『パテル派左派幹部2名の殺害が完了しました。今現在は逃亡中の鷲見セリナを追跡中で・・・』

『現在第二中隊はスクエア占領に向かってるっす・・・そちらの』

『司令部にて爆発が確認され・・・・』

『クルセイダーの側面を狙え!!』

『待ち伏せ攻撃を・・・・』

『中毒者共が要人を殺して回ってるぞ!!』

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「ナギサ様!!こちらでございます!!」

早朝、私は寝巻きのまま部下に自宅から引っ張り出された。

外では迫撃砲の音と銃声、叫び声が響く。

ナギサ「・・・・何が、何がどうなって・・・・」

「お乗りください!!」

無理やり車に押し込まれる。

「現状トリニティではパテル派右派、パテル派左派、フィリウス派、評議会、シスターフッド、中毒者による6つ巴の内戦に陥っており、もはや無政府状態です。このままではナギサ様のお命も危なく、急遽ですが百鬼夜行に・・・・」

隣の席で情報を説明していく彼女の声は、私の右耳から入って、左耳へ抜けていった。

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おまけ(若干追記)

ビター世界を船に例えるとこうなります

マコト「キキキ!ついにこのマコト様がキヴォトス号の船長だぁ!多少傾いているがなんのこれしき、すぐに立て直してくれる・・・・」

イロハ「先輩、先輩」クイックイッ

マコト「どうしたイロハ、イブキ係は・・・・」

イロハ「シロコさんが想定の3倍の荷物を積み込んでいて、少しずつですがこの船沈んでいってます」

マコト「・・・・何ぃ?!・・・・こ、こうしちゃいられん・・・・救命胴衣と救命ボートを用意しろ!!」

甲板

ナグサ(アヤメ・・・・・・・・)

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